創造農村

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100年の森への挑戦

兵庫県、鳥取県と境界を接する岡山県西粟倉村。

面積の95%を山林が占めるこの村が今、全国から注目を集めている。

村を南北に伸びる国道を北へ進むと、桜色の木造建築が目に飛び込んで来た。

廃校となった小学校をオフィスとして活用している株式会社西粟倉・森の学校(以下、森の学校)である。

人口1600人の小さな村において、森の学校の存在が大きな推進力となり、再生への取り組みが進められている。

村に転機が訪れたのは2004年。

日本各地で進められた「平成の大合併」だった。

近隣自治体との合併を住民の多数決により見送り、村は自立した自治体への一歩を踏み出した。

当時の村長は今後の方策を検討。

そして林業の再生を中心に据えた村の再生策「百年の森林構想」を宣言、スタートさせた。

村の北部にある100年以上前に植えられた杉林を見せてもらった。

森の中は明るく、木々の根元は緑に覆われ植生も豊かだ。

しっかり手入れが続くとこのような理想的な森になるのだという。

しかし戦後に植林された森には光が差し込まず、下草も生えていない。

林業従事者の減少と山主の高齢化により後継者が育たず、森に手が行き届かないことが原因だった。

50 年かけて荒れていった森を、50年かけて取り戻す。

森から木を切って消費者に届けるという事業を村全体で取り組む。

「森」という、村ならではの資源を生かした再生への道程が「百年の森林構想」だった。

10年間、山主から役場が山を預かり、その間に森林組合が間伐、手入れをし、10年後に山主に返還するという、山主にとって自己負担ゼロ、しかも利益分配あり、というシステムを構築したのである。

西粟倉・森の学校のオフィスとなっているかつての小学校。

森の学校の校庭には村の間伐材から作られた遊具が。

教室が内装材のショールームに。

同じく間伐材から作られた テーブル、チェア。

森の学校代表取締役・牧大介氏。

間伐材から作られた国産の割り箸。

村と「森の学校」のチャレンジ

2009年、村役場と森林再生支援会社のトビムシとが出資して森の学校を設立。

代表取締役には「百年の森林構想」の検討にも関わった牧大介氏が就任した。

そのミッションとして挙げられたのが「起業者の発掘」、「人材の育成」、「エンドユーザーの増加」だ。

過疎の村が残るためには、優秀で前向きにチャレンジできる人材を迎え入れ、育てる必要がある。

そこで、村の雇用対策協議会を「村の人事部」と捉え、「就職説明会」ではなく「西粟倉村挑戦者募集説明会」と題して村全体でリクルートの窓口を作り、村の取り組みや「百年の森林構想」の説明を行った。

そのメッセージに共感した多くの若者が村へとIターン。

現在、林業に携わり、村を支える原動力となっている。

また、インテリアデザイナーや木工職人、林業に携わっていた人々が会社を立ち上げ、保育園、幼稚園向けの遊具・家具の製造を始めた。

現在は東京方面からも受注が入っている。

さらに、閉鎖されていた工場を借り上げて再稼働させた。

「ニシアワー製造所」と名付けられたこの工場は村に新たな雇用を生み出し、現在は住宅部材から割り箸まで製造している。

オフィス向けの無垢床タイルのインターネット販売事業も軌道に乗り始めた。

このように、森から切り出された間伐材を村内の工房や工場にてワンストップで製品化し、物流コストの最小化を図った。

従来の流通方式にとらわれず、直接エンドユーザーと繋がっていく。

こうした村での取り組みの根底に流れているのは「心産業」と名付けられたコンセプトだ。

「心産業」が広げるコミュニティ

近隣市町との合併を選択しなかった村。

大量生産・大量消費、グローバル経済ではなく、個と個のつながりを大切にする、今までとは全く違う新しい産業を目指していこうと、「新」と「心」をかけ合わせ「心産業」というネーミングとした。

心産業はいかにしてユーザー、顧客と繋がるかが重要となる。

直接顧客に届けるため、プロダクトの開発も行う。

また村の「ファン」獲得に向け、観光ツアーやワークショプなどを定期的に開催し、村の魅力を村外へ向けてアピール。

「現代は地域の中だけでコミュニティを完結させられる時代ではない。

西粟倉村のビジョンを共有してもらえる地域外の人々ともコミュニティを形成していく。」と牧氏。

人と人、人と村を繋ぐプランナーは静かに、しかし自信を持って語った。

かつて日本各地で、子や孫、未来の世代へのために木を植えた人々がいた。

そんな人々が繋いできた想いを捨ててはならない。

想いを伝える「媒介」として、西粟倉村の森は今日も変わり続けながら、そこに在る。

ニシアワー製造所。家具・雑貨から割り箸まで、ここから生み出され、そして全国へ流通していく。

書籍・パンフレット
創造都市への展望―都市の文化政策とまちづくり
創造都市への挑戦――産業と文化の息づく街へ (岩波現代文庫) [文庫]
ソトコト