創造農村

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食の理想郷へ

かつて庄内藩の中心地として栄え、現在も城下町の名残をとどめる山形県鶴岡市は文化的に成熟した地であり、多くの文人墨客を輩出した。

時代小説の映画化により、世代を超えたファンを獲得した藤沢周平。

鶴岡をモデルとした作品をいくつも残し、農村が舞台の小説や農業にスポットを当てた随筆も執筆している。

この藤沢文学においても重要な要素であった庄内の農業や食文化は、近年の取り組みにより全国に広く知られるようになった。

東北地方において最も面積が広い鶴岡市。

市内には2000m級の山々から平野部、日本海に面した沿岸部などの多彩な地形を有している。

これらの地理と、そこからもたらされる気象変化は多様な農産物が生育するのに適した環境を生み出した。

あたり一面、金色の平原が続く。

鶴岡市の代表的な作物である米。

初秋の光景は見るものにその土地の豊かさを実感させてくれる。

庄内藩の頃より進められた稲の品種改良は、鶴岡の地を国内有数の穀倉地帯へと変えた。

より良い農作物を生み出そうと努力を重ねた先人たちの想いは現代にも受け継がれ、「つや姫」というブランド米は、全国的な知名度を誇っている。

また鶴岡市では在来作物も数多く継承され、その数は何と50種類にも及ぶ。

その中の一つ、「だだちゃ豆」と呼ばれる大豆は生育に適した気候、土壌が限られており、「まぼろしの枝豆」と呼ばれ、食通を唸らせている。

 これら貴重で豊かな作物が鶴岡の地に揃うのは、古くから農家の人々によって大切に育てられ、引き継がれてきたからに他ならない。

現在、バトンを受けた農家や、地産地消に取り組む料理人が、その素晴らしさを全国へ向けて発信している。

マスコミにも多く取り上げられているイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフ。

地元生産者の顔が見えるメニューを提案し、食材の魅力にスポットを当てた。

鶴岡の食を牽引する奥田シェフの存在が生産農家の意識にも変化をもたらし、首都圏のレストランとの取引が始まるなど、その魅力は広く浸透しつつある。

民田(みんでん)なす:小振りなサイズで漬け 物などに使われる在来作物。俳聖・松尾芭蕉は鶴 岡を訪れた際、このなすを詠んだといわれている。

温海(あつみ)かぶ:鶴岡市の山間部で栽培されている在来作物。焼き畑を行うことでリン酸が増加し、また害虫の駆除にもなるため無農薬での栽培が可能となる。

定期的に行われている「アドプト・ア・ハイウェイ神山」の取り組み。

宝谷(ほうや)かぶ:労力の割に収穫量が少なく収益に繋がりにくいことから生産が減少し、作り手も1名のみとなっていたところ、市職員やアル・ケッチァーノの奥田シェフなど有志の手により保存に向けた運動がスタート。 レシピを作り、その魅力を発信している。

市民総参加の食文化創造都市へ

これらの豊かな食文化を市民の手で、全国へ向けて紹介する取り組みが2011年より次々とスタート。

定期的に市民参加のイベントが企画・開催され「食文化創造都市」づくりへのステップを重ねている。

「鶴岡食文化アーカイブ」というプロジェクトでは在来作物レシピ集の発行や料理法の講習会、フォトコンテストを開催し、食文化の掘り起こしが行われている。

『つるおか おうち御膳』と名付けられたレシピ集には各家庭で作られる郷土料理や行事食など、市民から寄せられたレシピをピックアップ。

また、市民からリポーターを公募し、市内の生産者や料理人といった現場の声をフェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアを使い発信する「鶴岡食文化女性リポーター」という事業も実施している。

 そして産業面では、2012年に鶴岡食文化産業創造センターを開設。

「食から職へ」をテーマに、食文化創造都市を担う人材育成と、食にまつわる事業を新たに創り、地域の雇用機会を拡大するプロジェクトに取り組んでいる。

 このように鶴岡市では、食産業の関係者のみでなく、「食べる」側である市民一人一人が参加する地域振興プロジェクトとして展開している。

 これらの機運は決して一度に花開いたものではない。

かつての先人たちのたゆまぬ努力の末に築き上げられた農法や品種。

それを代々絶やすことなく守り抜いてきた農家の人々と、その魅力を再発見し、伝えていこうとしている人々の想いが結実し、このような形で食文化を盛り上げている。

鶴岡市で広がっているアクションは、食べることの喜びと、食を通した人と人の結びつきの大切さを、私たちに再確認させてくれる。

収穫初日」佐藤稔平成23 年度鶴岡食文化クリエイティブ・フォトコンテスト最優秀賞
このフォトコンテストは市内の食文化アーカイブの資料収集の一環として開催されている。応募作品には農林水産物や祭礼、生産現場の風景といった、食にまつわる光景が切り取られ、写真に収められてる。

市民の手でリストアップされた数百種ものレシピの中から厳選された157 種類を掲載。市内の書店のほか、産直市などでも販売されている。

鶴岡市に住む女性の視点で、地元の食にまつわる情報をFacebook やツイッターを用いて発信する「鶴岡食文化女性リポーター」。農家や料理人のもとへ取材に訪れ、食材や料理だけでなく、その背景にあるストーリーも紹介している。

書籍・パンフレット
創造都市への展望―都市の文化政策とまちづくり
創造都市への挑戦――産業と文化の息づく街へ (岩波現代文庫) [文庫]
ソトコト