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山間の町が起こした奇跡

緑豊かな山々を背に、小川に足を浸しながら、膝の上に置いたノートパソコンでメールを打つ若者...。

こんな光景をニュースなどでご覧になったことがあるのではないだろうか。

これは徳島県神山町にサテライトオフィスを構える企業の仕事中の一コマだ。

サテライトオフィスとは本社と同等の業務を行う事が可能な通信設備を備えたオフィスのこと。

現在、人口約6300人の神山町へ東京の企業がサテライトオフィスを構える動きが加速している。

企業だけではない。

この山間の地に人々が次々と集まりつつあるのだ。

この流れをさかのぼっていくと、神山町で様々なプロジェクトを展開するNP0法人グリーンバレーと、その理事長である大南信也氏の数々の取り組みが浮かび上がってきた。

高台から見渡す神山の景色。

戦前にアメリカから町へ贈られた 人形アリス。グリーンバレーの国際交 流事業の原点となった。

定期的に行われている「アドプト・ア・ハイウェイ神山」の取り組み。

神山町から世界へ

神山町出身の大南氏。

アメリカ・シリコンバレーの大学にて学び、卒業後は帰郷した。

大南氏に転機が訪れたのはPTA役員を務めていた90年代初頭のこと。

戦前、アメリカから母校の神領小学校に贈られてきた青い目の人形アリスとの出会いであった。

大南氏はアリスをアメリカへ里帰りさせるプロジェクトに取り組み、これを成功させた。

そしてこのプロジェクトがきっかけとなり、神山町の国際交流事業がスタート。

アメリカ発のクリーンアップボランティア「アドプト・ア・ハイウェイ神山」の導入や、アートイベント「神山アーティスト・イン・レジデンス(以下KAIR)」の運営を行うようになった。

 1999年からスタートしたKAIRでは国内外から芸術家を招聘。

町に2~3ヶ月滞在し作品制作を行ってもらうのだが、その間、制作費と生活費など費用のほとんどを運営側でサポートする。

もともと国際交流からスタートしたグリーンバレーだが、町の人々と芸術家で地域を高めていきたいという想いがあった。

芸術家には学校で「ようこそアーティスト」というプログラムを担当してもらい、子供たちとも交流を深めてもらう。

KAIRのバックアップ体制や、町の人々の人柄に触れ、活動拠点を神山町へ移す芸術家も現れた。

 そして2008年、グリーンバレーはKAIRの情報や神山での暮らしを発信しようとウェブサイト「イン神山」を立ち上げる。

その中のコンテンツ「神山で暮らす」という空き家物件情報のページが呼び水となり全国、特に東京から若者の移住者が増加していったのである。

三三社員の仕事風景。

株式会社三三の サテライトオフィスが入居する古民家。

ウェブサイト 「イン神山」。

縫製工場跡を利用した「神山バレー・サ テライトオフィス・コンプレックス」。広大なス ペースに複数の企業がオフィスを構える予定。

建築家坂東氏が 改修を手がけた古民家。この物件が、東京からのサテライトオフィス進出のきっかけを生んだ。

NPO 法人グリーンバレー理事長・大南信也氏。

玄関には各社それぞれの表札が掲げられて いる。

現在、3社が入居している古民家。

人、そして企業が集う町へ

ある時、ニューヨーク在住の建築家・坂東幸輔氏が「イン神山」を見て訪町。

大南氏の計らいで町内の古民家改修を手がけることになった。

そして、その現場を手伝っていた建築家・須磨一清氏と繋がりがあった株式会社三三の担当者がグリーンバレーの取り組みに興味を抱き、神山町にサテライトオフィスを開設したいと希望。

急遽大南氏が対応に当たり、実現にこぎ着けた。

この事例は相次いでマスコミにも取り上げられ、町の名は全国へと知れ渡った。

現在は7社が町内の物件にサテライトオフィスを開設している。

 また新たに、縫製工場跡へ企業数社を誘致。

「神山バレー・サテライトオフィス・コンプレックス」と名付けられた複合サテライトオフィスもオープンする予定だ。

この勢いはまだまだ止みそうにない。

 サテライトオフィス実現の肝となるのが町内全域に完備されたWi-Fi 環境。

導入した当時はまだスマートフォンが普及しておらず、費用対効果はなかった。

しかし必ず町のインターネット環境に反応する人々、企業がいるはずと大南氏は信じたのだった。

 このように、グリーンバレーの一つ一つの取り組みが新たな機会と出会いを生み、それがまた新たなステップ、プロジェクトへと繋がっていく。

こうして神山町は絶えず変化を続けている。

「創造的過疎」から見る未来の町

都市部への人口流出の流れに歯止めがかからない地方自治体。

大南氏はその流れに抗わず、減り行く人口の中での健全な姿を探る「創造的過疎」という考え方を提唱した。

20年後の町の人口構成を具体的にイメージできる数字にすることで目標ができ、対策を立てることができる。

 移住希望者に空き家を紹介する際におこなっているのが、本人のスキルや神山町で取り組みたいこと、10年後のプランなどのヒアリングだ。

この手法は「ワーク・イン・レジデンス」と名付けられ、町にとって必要な働き手を物件に対して逆指名する移住策に繋がっている。

町の将来の姿を具体的にイメージできている神山町だからこそ可能な取り組みといえる。

 そして2011年、神山町では転入者が転出者を上回り、初めて社会増に転じた。

今後も、神山町には人材・テクノロジー・文化芸術が集積を続けるだろう。

地域再生の具体的な姿がここにある。

書籍・パンフレット
創造都市への展望―都市の文化政策とまちづくり
創造都市への挑戦――産業と文化の息づく街へ (岩波現代文庫) [文庫]
ソトコト